2023.02.01| Book Review
家の中でも、都会の真ん中でも、筑波山でも。開けば心は、山の世界へ。山がもっと好きになるブックレビューのコーナーです。今回は、“漁師が植える森”として知られる「森は海の恋人」プロジェクトをもとにした絵本。お子さんと読むのにもぴったりの一冊です!
“漁師が植える森”として知られる「森は海の恋人」プロジェクト。平成元年から続く、気仙沼湾に注ぐ大川の源流域のひとつ、室根山での植林活動です。森は海の恋人である、を合い言葉に、カキの養殖を行っている漁師さんが毎年6月の第一日曜日に集まり、ブナやミズナラ、クヌギやクマノミズキなど、落葉広葉樹の苗を植えてきました。今では小・中学校の教科書でも取り上げられるほど、全国的な運動として広まっています。
絵本『山に木を植えました』は、このプロジェクトをもとに作られた一冊。植えられた木が森となり、川が養分を運び、海の命が育まれていく様子が丁寧に描かれ、解説されていきます。
the forest is longing for the sea,
the sea is longing for the forest.
森は海を想い、海は森を想う。
赤や黄色に色づいた落ち葉が腐葉土になり、土に栄養をもたらすこと。雨水が、その栄養を含み山にしみこみ湧き出し、栄養分をたっぷり含んだ川水をつくってくれること。そして川は海原へ繋がっていること。自然環境保護を訴えながらも押し付けがましくなく、優しく訴える内容で、幼い子どもでも学ぶことができます。プロジェクトの甲斐もあり、姿を消していたうなぎも少しずつ戻ってきたのだそう。森も海も人の手で変えることができる。次世代へ伝えたいメッセージが詰まっています。
写真・文/峰典子
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『山に木を植えました』
スギヤマカナヨ 著 / 講談社 刊