2020.07.02| Book Review,MountBooks
家の中でも、都会の真ん中でも、筑波山でも。開けば心は、山の世界へ。こんな時こそ、山がもっと好きになるブックレビューのコーナーです。
ぼっち登山が趣味の会社員、日比野鮎美(27)を主人公とした、登山グルメ漫画である。同僚に登山について声を掛けられると、思わず顔を強張らせてしまうレベルのコミュ障な鮎美。頭の中は週末に出向く山のことでいっぱいである。登山前の金曜日には、大量の弁当を持参。エネルギーを蓄えるために、サンドイッチ、ナポリタン、おにぎりという炭水化物コンボに食らいつく。
鮎美の山ごはんに欠かせないアイテムのひとつが、スウェーデン・トランギア社の飯ごう、メスティン。見た目がお洒落というだけでなく、1合分のご飯を美味しく炊けると定評なのだ。長めの片持ち手だから、そのまま口のそばまで運ぶことができて、とても便利。さて、炊きたてご飯に、何を載せようか。シンプルに半熟卵を割り崩すか。カキフライを卵でとじるのもいい。それとも、オイルサーディンをドサっとのせて醤油をまわしかけるか。あゝ、もうこの際、山でなくとも構わないと、自宅で再現してしまう人が、どれだけいるだろうか。かなりいると思う。
甘いものだって忘れちゃいない。ベーコンを一緒に焼く甘しょっぱいフレンチトーストや、生姜とウイスキーを利かせた大人のココア…。そう、一人登山だから、本能の赴くままに好きなものを食べられる。誰もいない山頂を独り占めできたらラッキー。それでも人がいなすぎると不安になり、慌てて登山する鮎美なのだが、それもまた愛おしい。
文/峰典子
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