2020.02.19| Book Review,MountBooks
家の中でも、都会の真ん中でも、筑波山でも。開けば心は、山の世界へ。山がもっと好きになるブックレビューのコーナーです。
映画『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(2004)の序盤、新学期を迎えたホグワーツで、こんな歌が登場する。
Double, double, toil and trouble;
二倍だ、二倍だ、苦労も苦悩も
Something wicked this way comes.
邪悪なものがやってくる
Eye of newt and toe of frog,
イモリの目玉、カエルのつま先
Wool of bat and tongue of dog,
コウモリの毛、犬の舌
Adder’s fork and blind-worm’s sting,
ヘビの二つに割れた舌、目の見えない虫の毒針
随分と不穏な歌詞なのだが、これはシェイクスピアの「マクベス」からの引用で、魔女のセリフである。魔女と言ったら皆さんもご存知、森の奥に暮らし、とんがり帽子に尖った鼻、大鍋でグツグツと得体のしれないものを煮込んでいる、というのが俗説なのだ。
中世ヨーロッパの魔女たちのルーツは、薬草に詳しく、自然療法を行っていた女性たち。ハーブを焚く煙に恐れをなした人々から魔女と呼ばれ、弾圧を受けてしまう。目玉や舌といったおどろおどろしい食材も、知識のないものが安易に手を出さぬ等につけた比喩らしい。例えばイモリの目玉はマスタードの種だと聞いた。
『12か月の魔女』の著者は、魔女とハーブの専門店を営む、いわば魔女博士。森に暮らす彼女たちがつくってきた四季ごとの美味しいお菓子や、ハーブティーといったレシピとともに、身体を整えるアドヴァイスが連なる。祭りに関するコラムも面白い。ドイツのハルツ山地で毎年開催されるという魔女祭りには、ぜひ一度行ってみたいと思った。
文/峰典子
[参考文献]シェイクスピア(1996)『シェイクスピア全集3 マクベス』(松岡和子訳)筑摩書房
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