2019.09.24| MountBooks
家の中でも、都会の真ん中でも、筑波山でも。開けば心は、山の世界へ。山がもっと好きになるブックレビューのコーナーです。
アーノルド・ノーベルといえば、真っ先に思い浮かべるのは「がまくんとかえるくん」シリーズでしょう。おっとりしていてのん気ながまくんと、しっかり者で長身のかえるくんは、見た目だけでなく性格も真逆。そこにつづられているのは、お互いを認め合いかけがえのない居場所となった友情。ほろりとさせられる物語です。
『ふくろうくん』は、森で暮らしているふくろうくんの日常を描いた一冊。なんともいえないほのぼのとした5つのお話には、ふくろうくん自身しか登場しません。月とさようならしたいのに追いかけてくる「おつきさま」や、なみだを貯めてみようと思いつく「なみだのおちゃ」など、物事をすべて真正面からピュアにとらえ、真剣に悩み考える様子は、まるで幼い子供の横顔を覗いているよう。
のちにアーノルドの娘は父を語り「父はとても孤独な少年時代を過ごした。物語を上手に話す事が友達を作る手段だった。父は、友達はとても大切だと考えていて、それが物語に表れている」と述べています。<ふゆ>や<つき>と仲良くなろうとしたふくろうくんは、アーノルドの幼少時代そのものなのかもしれません。初秋に、微笑みを運んでくれる一冊になりそうです。
そうそう、ふくろうは、筑波山にも住んでいるみたいで、つくば市の鳥にも指定されているんです。そんなことを頭の片隅に置いておきながら、ページをめくってみてください。
文/峰典子
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