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茨城県 筑波山で登山・ハイキング/コース&観光ガイド

Journal筑波山ジャーナル

2023.02.20| Book Review

Mount Books #27
登山経験ゼロから、アルプスに10年勤続
—『山小屋ガールの癒されない日々』吉玉サキ

家の中でも、都会の真ん中でも、筑波山でも。開けば心は、山の世界へ。山がもっと好きになるブックレビューのコーナーです。今回は、23歳から33歳まで北アルプスの山小屋で働いていた著者が綴る山小屋エッセイ。なんと著者は登山未経験だったというから驚き!

23歳から33歳まで北アルプスの山小屋で働いた。といっても、山が好きだったわけではないと読んで驚いた。心の調子を崩して会社を辞め、山小屋経験者の幼なじみに勧められて履歴書を出してみたら採用。初登山が初出勤()。そこからあれよあれよと長い山小屋勤務が続いてしまったのだという。

集まってくる人や日々の仕事ぶりが綴られていて、どのテーマも興味深い。業務の割り当てや、1日のスケジュール、賄いのメニューなんかも知れるが、想像通り大変そうなことが多い。食料を入手するため、ヘリの荷造りや歩荷(荷物を背負って山を歩くこと)は欠かせないし、雪の重みで建物が倒壊しないよう、寒くなると柱を立てることも必要。都会にいればしなくてもいいことが作業の大半なのである。

しかし、水が合う、と言えばいいのか、著者と山小屋はとっても相性抜群のように感じる。一見、狭そうに感じる山小屋のコミュニティだが、そこで働く人たちは広い視野で世の中を見ているし、自分の物差しで他人を判断しない。物理的に空の広い場所というのも、思考に良い影響を与えるのだろうか。悩むこと自体がバカバカしくなるのかもしれない。登山経験がない人でも面白く読める“山エッセイ”はそう多くはないと思う。登山未経験だった著者が綴ったからこそ、の一冊だ。

写真・文/峰典子


『山小屋ガールの癒されない日々』
吉玉サキ 著 / 平凡社


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