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茨城県 筑波山で登山・ハイキング/コース&観光ガイド

Journal筑波山ジャーナル

2020.04.27| Book Review

Mount Books #10
女性アルピニストが愛でた花々
—『花の百名山』田中澄江

家の中でも、都会の真ん中でも、筑波山でも。開けば心は、山の世界へ。こんな時こそ、山がもっと好きになるブックレビューのコーナーです。

彼女たちはいったい何を想い、何に魅了されて、頂を目指したのだろうかー。たくさんの先駆者がいる登山の世界だが、富士山を代表する霊山で女人禁制が解かれたのは明治5年。それから何十年にもわたり「女が登山なんて」と好奇の目に晒されることの方が多かったのだ。

花の百名山

そんな中でアグレッシヴに山を愛し続けた女性たちがいる。村井米子(1901-1986)は、16歳で富士に初登頂。日本中の山々を歩き、マタギの食文化を随筆にまとめあげた。同時期に活躍したのが、黒田初子(1903-2002)。雪氷学者の夫との結婚をきっかけに、剱の八峰、北穂の東稜など数々の女性初登攀をし、後進を育てることに精をあげた。1975年には、田部井淳子(1939-2016)が、女性だけのチームでエベレストへの登頂に成功。35歳、二児の子育ての傍らでのことだった。

『花の百名山』の著者である田中澄江(1908-2000)も、多忙な劇作家でありながら、登山家として名を馳せた。卒寿を迎えてからも東京近郊の低山に足を運んでいたという。「山へゆく時間を作るためには、いろいろと工夫がいる」「取捨選択を素早く行えるようになったのも、山歩きに親しむようになったおかげ」だという。北海道から鹿児島まで自分の足で登り、花々と女性の人生を重ね合わせた軽やかな文体で、読売文学賞を受賞。登場する花樹は八二四種で、資料としても貴重。文庫新装版を手に取れる今、改めて読みたい一冊である。

文/峰典子

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