°c

茨城県 筑波山で登山・ハイキング/コース&観光ガイド

Journal筑波山ジャーナル

2019.06.14| Book Review

Mount Books #01 『山小屋ごはん』
包容力満点、山ごはん

家の中でも、都会の真ん中でも。開けば心は、山の世界へ。山の本屋、開店です!

『山小屋ごはん』
松本理恵 著
ヤマケイ文庫

随分と昔の話だが、今でも忘れられない山の思い出がある。20歳のころ初めて富士山に登ったときのことだ。空気が薄く息苦しくなってきた7合目過ぎくらい。人の邪魔にならないよう脇に転がる岩に腰を下ろし、コーヒーを飲んでいる中年男性がいた。私はというと、ズンと重たい脚を交互に押し出しながら、彼の慣れた手つきを眺めている。小さなコンロで1人前の湯を沸かし、手のひらに収まったミルからはガリガリという音が聞こえてきそうだった。カップからたちのぼる香りに感動してしまい、通り過ぎたあとに何度も振り返った。そのあと、山頂で食べたカップヌードルは、涙が出るほど美味しかったのだ。

「山小屋ごはん」に掲載されているのは、日本各地の山小屋や山荘、小さな宿でふるまわれている食事の数々である。高級食材なんてお呼びではない。地元で採れるもの、手に入りやすいもので、山を訪れる人の心と身体を満たす食事を作る。どの写真を眺めていても、驕ることなく、実直で、包容力があって、どっしりとしている。そう、まるで山みたいなご飯なのだ。作り手が込める想いを読んでみたら、明日にでも行きたくなった。嗚呼、山ごはん。

文/峰典子

 

Amazonで買う

©  2019  Mount Tsukuba